お盆とは?ご先祖様の霊を供養する伝統行事について解説!
- 風習
8月中旬が一般的にお盆と呼ばれる時期ですが、「お盆とは何?」「お盆には何をするべきなの?」と聞かれてもよく知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、お盆の持つ意味や由来、お盆を迎えるにあたって準備しておくことやお盆の過ごし方について解説していきます。
また、お盆の風習やお盆の頃に催される地域行事もご紹介します。
目次
お盆とは?
お盆とは、故人やご先祖様の霊を自宅にお迎えして、ご供養する1年で1度の伝統行事のことです。
お盆の意味や由来、お盆の期間について解説します。
お盆の意味
お盆は、正式には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と呼ばれる先祖供養の儀式の一つです。
故人やご先祖様が、浄土(あの世と呼ばれる世界)から現世(この世)に戻ってくる期間とされ、故人やご先祖様が主に生前を過ごした場所である自宅にお迎えして、再び戻っていくあの世での幸せ(=冥福)を祈る機会となっています。
故人が亡くなってから四十九日の忌明け後、初めて迎えるお盆を新盆、または初盆と言います。
新盆は、故人の霊が初めて浄土から現世に戻ってくるお盆なので、家族や親族、さらに故人と親しかった方も招き、特に手厚く供養を営みます。
また、菩提寺の住職に法要をお願いすることが多いです。
お盆の由来
お盆の由来は、仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)に由来しています。
盂蘭盆会は、お釈迦様の弟子の目連尊者(もくれんそんじゃ)が、亡くなった母を救うために行なった供養のことです。
目連尊者は、母が餓鬼道(※1)に落ちて苦しんでいることを知りました。
そこで、お釈迦様に助けを求めたところ、お釈迦様は、目連尊者に盂蘭盆会を行うように教えました。
目連尊者は、お釈迦様の教えに従って盂蘭盆会を行い、母を救うことができました。
盂蘭盆会は、中国から日本に伝来し、日本独自の風習を加えて発展しました。現在、お盆は、故人やご先祖様を供養する大切な行事として、日本全国で広く行われています。
※1 餓鬼道とは、仏教の六道の一つです。六道とは、天道、人間道、畜生道、修羅道、地獄道、餓鬼道の六つの世界のことで、餓鬼道は、地獄道に次ぐ苦しみの世界とされています。
お盆の期間
お盆の期間は、地域によって異なります。 一般的には、8月13日から16日までですが、北海道や東北地方では7月盆を祝う地域もあります。 日本の各地域のお盆の期間は、次のとおりです。
- 北海道、東北地方:7月13日から16日
- 関東地方、中部地方、近畿地方、中国地方、四国地方:8月13日から16日
- 九州地方:8月12日から15日
8月13日から16日までの期間に、迎え盆(13日)、中盆(14日)、送り盆(15日)、最終日(16日)に分けて行われます。
お盆は、ご先祖様や故人を供養する大切な行事です。 お盆期間中は、お墓参りに行ったり、仏壇に手を合わせたり、お盆料理を食べてご先祖様や故人を偲びましょう。
お盆の風習を紹介
お盆の風習は、宗派や地方によって大きく違うのも特徴です。
次に、一般的なお盆の風習について紹介します。
迎え火・送り火
迎え火とは、お盆に先祖の霊を迎え入れるために焚く火です。一般的には7月13日または8月13日の夕刻に行われ、家の庭や墓地で焚きます。迎え火には、松明や焚き火などさまざまなものがあります。迎え火を焚くことで、先祖の霊が迷わずに生前暮らしていた家へ帰ることができるとされています。
迎え火は、お盆の行事の中で最も重要な儀式の一つです。迎え火を焚くことで、先祖の霊を敬い、感謝の気持ちを表すことができます。
送り火とは、お盆に帰ってきた先祖の霊を現世からふたたび浄土へと送り出すために焚く火です。一般的には7月16日または8月16日の夕刻に行われ、家の玄関先や庭で行われるものから、地域社会の行事として行われるものまで、さまざまな規模で行われています。規模の大きい地域行事として、京都の五山送り火は有名です。
送り火は、先祖の魂を偲び、感謝の気持ちを表す行事です。お盆の時期には、送り火を眺めながら、故人を思い浮かべてみてください。
お盆提灯
お盆提灯は、お盆に仏壇や墓前に飾られる提灯のことで、先祖の霊の道標(みちしるべ)となると言われています。
お盆提灯には、様々な種類があり、形や大きさ、色、デザインなど多種多様で、お盆の時期になると、仏具店などで販売されます。
精霊馬(しょうりょううま)・牛馬飾り
精霊馬(しょうりょううま)・牛馬飾りとは、お盆に供えるキュウリとナスを使った馬や牛の人形です。精霊馬・牛馬飾りは、お盆に家へ帰ってくるご先祖様の乗り物とされています。キュウリは、ご先祖様が早く帰って来られるように走るのが速い馬として、ナスは、たくさんの供え物を乗せ、ゆっくりと戻れるように歩みの遅い牛として見立てられています。
精霊馬・牛馬飾りは、お盆に仏壇や墓前にお供えするほか、お墓参りの際に持ち歩いたり、お墓のそばに置いたりすることもあります。精霊馬は、お盆の風物詩として、日本各地で親しまれています。
水の子(みずのこ)・蓮の葉
水の子(みずのこ)とは、キュウリやナスを賽の目に切った物や、洗った生米を混ぜた物をお盆にお供えする食べ物の一つで、煩悩を祓う意味があります。この水の子や果物を載せるために蓮の葉をお皿として使います。
蓮の葉は、ロータス効果(※2)により、水滴が葉に残らず、汚れも付きにくいため、古くから仏教の象徴として用いられています。
水の子は、平安時代に中国から日本に伝来したと言われています。当時、水の子は、仏教の修行僧たちが食べる食べ物でした。水の子は、煩悩を祓う食べ物として、お盆に仏壇にお供えするようになりました。
水の子は、お盆の食べ物として、今でも日本各地で食べられています。水の子は、お盆の時期になると、スーパーや八百屋で販売されています。水の子をお盆に食べることで、ご先祖様を供養し、無事に帰ってくることを願います。
※2 ロータス効果とは、表面が滑らかで、水滴が転がるようにして葉から離れていくという性質のこと
お盆の過ごし方
お盆の期間は、帰省されたり、お墓参りに行かれたりと、さまざまな過ごし方があると思います。宗派や地域によってもさまざまなのですが、一般的なお盆の過ごし方をここでは紹介します。
お盆の前日まで
- 法要手配の準備
- お盆飾りの準備と飾り付け
- お墓とお仏壇の掃除
法要手配の準備
特に新盆をお迎えするご家庭でしたら、お盆法要の日程をなるべく早くから決めて、お寺様のご都合を確認する必要があります。お盆の頃は、お寺様もご多忙なので、希望の日にお願いできない場合もあるので、早めにご相談することをおすすめします。
お盆飾りの準備と飾り付け
お盆には、お盆提灯や精霊馬・牛馬飾りなどをお飾りして故人や先祖をお迎えする風習があります。
お盆の1週間前やお盆の月に入ったタイミングで準備を始めましょう。
お墓とお仏壇の掃除
ご先祖様をお迎えする前に、お墓とお仏壇をきれいに掃除しておきましょう。
お盆の時期はお墓参りに来られるお客様もいらっしゃることもあるので、事前にお墓も掃除しておくことが望ましいですが、難しければ、お墓参り当日にお掃除しても構いません。
お墓のお掃除のときは、落ち葉や雑草を取り除き、墓石に付いた砂やほこりを水で洗い落とし、その後タオル等できれいに拭きます。
お墓の清掃方法について詳しく知りたい方は、コラム「富山県のお墓は地上納骨方式が主流!お墓にかかる費用や清掃方法などを解説 ~お墓を清掃する手順とポイント~」をご覧ください。
13日(迎え盆)
- 故人様へのお供え
- 家族揃ってお墓参り
- 迎え火を焚く
- お盆提灯に灯りをつける
故人様へのお供え
お供えは、「五供(ごくう)」と呼ばれる「香(お線香)・花・灯明(ろうそく)・浄水(水)・飲食(食べ物)」の5つが基本です。いずれも普段のお参りでお供えするものですが、お盆の時期は精進料理や果物など普段より盛大にお供えすることも多く見られます。
料理をお供えする場合は、自分たちが食事をする前に差し上げて、自分たちが食事を終えたときに下げましょう。お盆の期間中(13~16日)は毎日3食ともにお供えしたいものですが、難しければ中日(14・15日)だけでも問題ありません。
家族揃ってお墓参り
ご家族でお墓参りに行きましょう。お墓参りの日にちには決まりはありませんが、「迎えは早く、帰りは遅く」という言葉もあるように、ご先祖様のお迎えの意味も込めて、お盆入り(13日)の午前中が望ましい時間帯とされています。
富山県のお墓について詳しく知りたい方は、コラム「富山県のお墓は地上納骨方式が主流!お墓にかかる費用や清掃方法などを解説」をご覧ください。
迎え火を焚く
ご自宅の玄関先や庭先、またはお墓で「迎え火」を焚いて、先祖の霊をお迎えします。
お盆提灯に灯りをつける
事前に用意していたお盆提灯に灯りをつけましょう。
お盆提灯は、先祖の霊の道標になると言われているので、お盆の期間中は、提灯の灯明を絶やさないことが良いとされています。昼間は消していてもよろしいですが、夜間はご家族が起きている間は灯りをつけておくようにしましょう。
14日・15日(中日)
- 故人様を偲んで会食
- お盆法要
故人様を偲んで会食
宗教や宗派に関係なく、親族や生前故人様と親しかった方々を招き、故人様を偲んで会食をします。ご自宅やお料理屋で行なうことが一般的です。
お盆法要
お盆の時期に行なう法要は「盂蘭盆会」とも呼ばれ、お寺様に伺うか、ご自宅にご住職を迎えて、読経をしていただきます。お布施の相場は明確ではありませんが、一般的に3~5万円程とされています。
16日(送り盆)
- 家族揃ってお墓参り
- 送り火を焚く
- お盆飾りの片付け
家族揃ってお墓参り
地域によっては、お見送りの気持ちを込めて送り盆(16日)にもお墓参りに行くところもあります。お見送りの際は、夕方頃が望ましいとされています。
送り火を焚く
迎え火と同じように、ご自宅の玄関先や庭先、またはお墓で「送り火」を焚いて、先祖の霊をお見送りします。
お盆飾りの片付け
お盆飾りの片付けは、送り火が終わった後にすぐに行う方が望ましいとされていますが、時間が遅くなってしまった場合は翌日でも構いません。
お盆をしない宗派はあるの?
浄土真宗では、お盆に先祖が帰ってくるという考え方をしません。浄土真宗では、人は死後すぐに阿弥陀仏の浄土に生まれ変わると信じられています。そのため、お盆に先祖が帰ってくるという考えは必要ありません。
浄土真宗では、お盆は先祖への感謝の気持ちを込めて、阿弥陀如来のお念仏を聞くための日とされています。また、お盆は、家族や親族が集まって、故人を偲ぶ日でもあります。
お盆に水辺に行くのはいけない?
霊は喉の渇きを訴えるために水辺に集まると言われていて、そのことからお盆に水辺に行くと霊に憑かれるという迷信があります。また、お盆は海の事故が多い時期でもあるため、お盆に水辺で遊んだり、泳いだりすることは避けたほうが良いでしょう。
お盆の地域行事
お盆は仏教行事として少し難しいイメージをお持ちの方もいらっしゃることと思いますが、お盆の期間中には、日本各地でお盆と深い関わりがある地域行事が催されています。
いくつか有名なお盆の地域行事を紹介します。
盆踊り
盆踊りは、先祖の霊を供養するための踊りで、夏の暑さを吹き飛ばすための行事としても行われてきた仏教行事です。
富山県で毎年9月1日から3日間行われる盆踊りの一種のおわら踊り「おわら 風の盆」は全国的にも有名です。
灯篭流し(とうろうながし)
灯篭流し(とうろうながし)は、お盆にろうそくを灯した灯篭を川や海に流す行事です。先祖の霊を送り出すと考えられています。
福井県で毎年8月に行われる「永平寺大灯篭ながし」は、日本最大級の灯篭流しの行事です。灯籠が九頭竜川に流れる様子は、とても美しく、故人を偲ぶ気持ちが込められています。
京都大文字焼き
京都大文字焼きは、毎年8月16日(送り盆)の夜に京都府にある如意ヶ嶽(大文字山)などの山に、「大、妙法、船形、鳥居形、左大文字」の五つの送り火を焚く行事です。正確には「五山の送り火」と呼ばれ、お盆に戻って来られた先祖の霊を浄土へ送るための行事です。
打ち上げ花火
今では夏の風物詩となっている打ち上げ花火ですが、もとはお盆の行事として始まったとされています。打ち上げ花火は、先祖の霊が戻ってくるための道標として、また、先祖の霊を送り出すために打ち上げられます。
福井県で毎年8月11日に行われる「三国花火大会」は、毎年約25万人が来場する北陸最大級の花火大会です。
お盆の意味をしっかり理解してご先祖様をお迎えしましょう
お盆は、盂蘭盆会が由来で、7月か8月の中旬に先祖の霊を供養する行事です。
宗派や地域によって時期や風習が異なるので、「こうすればよい」といった決まりはありません。しかし、ご先祖様をお迎えする大切な行事なので、自分の住んでいる宗派や地域の風習は知っておく必要があります。
しかし、重要なのはご先祖様をお迎えし、供養し、そしてお見送りするという気持ちです。
迎え火や送り火などのお盆の形式はできなくても、お墓参りをするだけでも意味のあるお盆の過ごし方です。
お盆の意味をしっかり理解することで、お盆をよりよく過ごすことができます。
ご先祖様に感謝する年に1度の機会として、お盆の過ごし方について考えてみてはいかがでしょうか。
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